子供の頃、幼稚園のお遊戯会でピノキオをやった。
ミュージカル仕立てで音楽に合わせて踊ったり歌を歌ったりした。
なんで自分がピノキオに選ばれたのか、
今になっては解らないが、多分、「背が高い」というのが理由だろう。多分。
「主役」なので、親は嬉しかったのかも知れない。
ところが当の本人は違った。
ピノキオはご存じの通り、おじいさんの作った男の子の人形。
女神様に命を吹き込まれ、ネコとキツネに騙されて、すったもんだあった挙げ句に人間の男の子になるというご都合主義この上ないお話し。
人形のピノキオと人間のピノキオの違いは?
画用紙で作った「鼻」だけ。
格好は至ってシンプル。
半ズボンにシャツに蝶ネクタイに帽子。
いわゆる「普段でも着られる」洋服。
子供心に、キツネ役とネコ役の子が着ていた「着ぐるみ」っぽい方が断然着たかった。
練習の時、いつも羨ましかった。
変わってくれるのならふたつ返事で変わってもらいたかった。
子供の価値観というのはそんなもの。
「私、主役よ!」
ってセリフは大人の考えたマンガやドラマのセリフ。
よく、バカな親が
「なんでうちの子は主役じゃないんですかっ!!!」
と先生に詰め寄って、桃太郎が10人いたり、全員がシンデレラがだったりする話を聞くが、
親のエゴを満たすために子供の世界を踏み荒らさないで欲しいと思う。
そんなに自分の子供を主役にさせたいのなら、「ひとり芝居」でもさせればいいと思う。
「むかし、むかし、桃太郎は桃の中に入ってどんぶらこっこ♪どんぶらこっこ♪と流れていきましたとさ、めでたしめでたし・・・」
ってな具合にね。
大人になったとき
「オレ、幼稚園の頃、浦島太郎の劇やってさ〜そんでもって、オレ、『わかめ』なわけ。全身ミドリでセリフ無しでずぅ〜〜っとフルフルしてんだよ。そのうち、おしっこしたくなっちゃってさ〜、本気で下半身震えてて、後で先生が『上手だったわよぉ〜〜♡』だってさ、笑っちゃうよな〜」
って方がなんかいい奴っぽいよな。
それが
「最初、オレ、わかめだったんだけどさ〜うちの母ちゃんが乗り込んでって、騒ぎ立てたら、浦島太郎の役増えちゃって、オレ、玉手箱開けるときの浦島太郎だったわけ。うけるぅ〜〜!!」
だと、笑いも取れないね。
未だに、あの着ぐるみが羨ましい。