テレビが大好きだった
白黒テレビの時代から観ていた。
家の向かいが電気屋だったので、カラーテレビを観たいときは電気屋の店頭で座り込んで観ていた。
「うちもカラーテレビ買うてやぁ〜」
と親に訴えた。
じいちゃんが
「ともみち、よう見てみ、白黒テレビいうのはの、想像力が付くんじゃ。
こうやって、じぃ〜〜っと見とるとの、これは、緑、これは、赤、そう思うて見てみ、
なんか、色が付いて見えるじゃろ?」
「ほんまじゃ!おじいちゃん!なんか、緑色のスズメが飛びよるよ!」
というのもいつまでも続かず、再度チャレンジしたところ、母親がキャラメルの包みの色つきのセロファンを貼り合わせて白黒テレビの画面に貼り付け
「ほら、色が付いたじゃろ?これでカラーテレビっ!」
投げ捨てジャーマンが決まった。
いつしか、我が家もカラーテレビが入って、人生の楽しみの中に「テレビ」があった。
土曜日のお昼は学校から帰るとお昼ご飯にうどんとか食べながら「吉本新喜劇」を観るのが楽しみだった。
週末の夜、遅い時間に「ウィークエンダー」という事件をレポーターが報告する番組があって、半ばに「再現フィルム」と称して事件を役者さんが再現するコーナーがあったのだが、お約束で、ちょっと「お色気シーン」があるのだが、それが写ると親が
「ゴホン!ウン!ウウゥ〜ン!あんた、宿題があるんじゃないんね?」
「あ、ああ、そうじゃった・・」
となぜか気まずい空気が漂い、後ろ髪を引かれながら自分の部屋へと引っ込んで行った。
それでも深夜の「11PM」(当時の深夜の大人向け番組でムフフなコーナーが盛りだくさんでした)はどうしても観たくて、親が寝静まったのを見計らって食堂に忍び込み、イヤホンを刺してこっそり観ていた。
親が来る足音が聞こえると速攻でスイッチを切り、イヤホンを抜いて冷蔵庫を開ける。
「あんた、なにしよんね?」
「あ・・ああ、喉乾いたけえ、ジュース飲もう思うて・・・」
「うそ、言いんさい!テレビ観とったじゃろ?」
「み・・・観とらんよっ!」
としどろもどろの僕の背後のテレビは当時、真空管だったので、「お母さん、こいつ、さっきまで、エッチな番組観てましたよ」と言わんばかりに白くぼやぁ〜〜っと明るくなってた。
ヒーローもので正義感を養い、
スポーツ中継で感動を覚え、
恋愛もので気の利いたセリフを覚え、
教育番組で深い眠りに誘われた。
テレビは僕を育ててくれた。
先日、朝の某情報番組の1コーナーで、
「某ハンバーガーショップが新製品の行列にさくら1000人を時給1000円で雇っていた」
というニュースを取り上げ、司会者の一人が
「これ、私はいいと思うんですよ!昔、アイスクリームでもよくやったじゃないですか!あ、それでね、これ、食べたんですけど、おいしぃ〜〜〜いんですよ!かなりっ!」
と叫んでいた。さらにアナウンサーが
「同社は意図的に行列をつくるつもりはなかったと話してる」
と付け加えた。
情報操作じゃんか。
完璧にスポンサー保護。
もちろん、スポンサーあっての放送なのだが、あからさまにこういうことをやられると悲しくなってしまう。
コメンテーターまで巻き込んで
「いいねこれ!いい!」
なんて口を揃えて言われると、なんだかバカにされてるような気がするのは僕だけなのだろうか?
番組名とは裏腹に「ガッカリ!!」させられた。
テレビが好きだった、
でも、最近、テレビが嫌いになってきた。
小ずるさは教えてくれなくてもいいんだけどな〜