
今年初めてモンタンベールでカレーを食べに行きました。
他にも美味しいカレーを食べさせてくれる店はたくさんありますが、僕がここに通い続ける理由はもうひとつあります。
ここのシェフの伊藤さんが大好きだからです。
伊藤さんは時々手が空くとカウンターまで出てきてお客様に話しかけたり挨拶したりされます。
時には自分で運んだり、お皿を下げたり大忙しです。
その合間を縫ってお話を伺うことがあるんだけど、いつも心に響くお話をしてくれます。
以前のエントリーで触れた「機械が仕事をダメにする」の話しをすると伊藤さんはこう言いました。
「最近の若い職人さんは基本が無い人が多いですね。
創作料理ばかり作っていると、なんでもない基本の料理が出来なかったりします。
そして、わりとすぐに辞めてしまい変わりますね。
変わった先のお店のやり方に『慣れる』だけで肝心の芯の部分に触れてない。
僕なんか30年前に書いたレシピのノートを未だに引っ張り出して使ってますよ。もうボロボロですけどね(笑)
そうやって芯の部分を積み重ねて『自分だけの辞書』を作ることが出来ると『どこに行っても通用する』ことができますよね。」
相変わらずかっちょいい人です。
これは全ての仕事に言えることだと思うんだけど基本がしっかり出来ている人は伊藤さんがおっしゃるとおり、「どこに行っても通用する」それがその世界で「一人前」だと僕は思います。
隣の有名パテシエのToshiYoroizukaのトシさんはあたりまえですが「なんでも作れます」。焼き菓子だろうがムースだろうが飴細工だろうが。
けれど、お店自体はご存じの通り行列店なので、スタッフの数も相当います。
だからどうしても分業になってしまい、ムースを作る人はムースばかり毎日作っています。袋詰めしてる子は毎日袋詰めばかり。
彼らが独立して「ムース専門店」や「袋詰めの店(あるかどうかは知らないが)」をやるのならいいでしょう。
大手のレストランで働いていて「自動パスタマシーン」とか使っていて自分も大手のレストランを開くならいいでしょう。
慣れるだけの仕事を続けていくと「どこに行っても通用しない」人になってしまいます。
行く先々で前の店や職場の悪口を言い、本質を見ようとしていないと最後には自分の首を絞めることになってしまうのに。
伊藤さんのおっしゃるように「自分の辞書を持つ」ことが出来た人こそが自分だけのオリジナルを作ることが出来ると僕は信じています。
そして僕は今日も新しい発見をして自分の辞書のページを増やしています。
「教えたくないカレー屋《モンタンベール》」
http://hairhana.exblog.jp/6266238/