東京ミッドタウンの敷地の奥に
「21_21 DESIGN SIGHT」という建物があります。
そこで「安藤忠雄 2006年の現場 悪戦苦闘」が開催されています(4月18日まで)。
建築模型・写真・ドローイングなどによってそれが誕生するまでの流れを実際にその建築物の中で体感できるというものです。
この建物のテーマはあのファッションデザイナーの三宅一生さんの「一枚の布」が起用されています。
一枚板の屋根の下に三角形の折り紙がパタパタと折り重なるようにバランスを取りながら建っています。
「コンクリート打ちっ放し」というとなんだか
「あんなん、鉄筋組んで生コン流し込んだだけの手抜きじゃん。」
と無知な僕は思っていました。
ところがどっこいなのである。
もし、その言葉を口に出してその場にこの建物に関わった人が一人でもいたら土下座してお詫びしなければならない。
「悪戦苦闘」という今回のミュージアムのタイトルどうり、全ての関わった人が苦闘している。
先日の和菓子職人ではないが「魂」のこもった「究極の手作り」なのかもしれません。
所内コンペに始まり、数え切れないくらいの打ち合わせと変更。
当初屋上にヘリポートを作りミッドタウンと地下で繋げる予定が全て白紙。
ほぼ、三角形で決まって着工する間際に
「いや、丸じゃないか?」
と結婚式の最中に「他の相手と結婚したい!」という暴挙など足元にも及ばない提案。(結局三角に収まる)
喫茶店のナプキンに書きなぐったメモ。
何度も何度も修正し、書いた人にしかわからない図面。
全てが戦いという真剣勝負。
昨日は安藤忠雄さん本人が来場されて3時からトークショーを開かれたので参加させていただきました。
安藤さん曰く、
「日本の建築技術は素晴らしい。世界一だと思っている。今回、この建物に関わった職人さんたちは素晴らしい技術を持っている。
残念なのは年々そういった仕事を志す人が少なくなっているという現状。
今回は「こんなに素晴らしい仕事をしているんだ」ということを紹介したくて開催した。」
数ミリも狂わず敷き込まれた鉄筋の土台。
自称「日本一の鉄筋工」が美しく組み立てていく様。
床コンクリートの左官工事では最後は手仕事で完全な平坦な面を作る。
究極の精巧は機械ではなく人の手と言うことになる。
計算するのはコンピューターの方が早いのかも知れないが温度、手触り、想像、そして進化し続ける。やはり人間の脳の方が素晴らしい。
上海や台湾、ドバイでは高層タワーブームで、いずれ地上800mを超える文字通り雲の上の建物が出来ようとしているが、安藤さんに言わせれば「今はもうそんな時代ではない。」とのこと。
先頃の「耐震偽造問題」で建築業界は逆風が吹いている。
しかし、そうした暴挙を許した未熟な風潮の一方で現場の熟練工たちは今日も汗をかき熱心にコツコツと素晴らしモノ作りをしている。
安藤さんは「都市の記憶の喪失」という言葉を使われました。
日本は地震や火事の多い国で昔から木造建築で火事になったとき周りの家を壊して燃え広がるのを防いでいた。
だから壊しやすく建てやすい家が多く、ヨーロッパのように何百年もそのままという習慣がない。
古いビルを壊し、更地にし、雲を突き抜けるくらいの高い建物を建てる。
これでは街のイメージがまるっきり変わってしまう。
彼が手がけた
「表参道ヒルズ」も日本で初めての集合住宅の同潤会アパートの面影を残しながら原宿という街の記憶を後生に伝えていく建物である。
一人の女性が美しくなるために整形し髪型も変え「別人のような美しさ」を得たとしてもそれは彼女自身の美しさではない。
僕の仕事もその人の髪質、肌の色、イメージを無視して流行のデザインを作るのではなく、その人のイメージの記憶を残しながらより美しく引き立てるデザインを魂を込めた技術で表現してみたいと思いました。
自称「日本一の美容工」を目指します。
******* 紹介 *********
安藤忠雄
http://ja.wikipedia.org/wiki/安藤忠雄
実は、元プロボクサー。リングネームは「グレート安藤」。
21_21 DESIGN SIGHT
http://www.2121designsight.jp/