僕たち美容師はよく「ヘアーメイクアーティスト」と呼ばれますが、
美容師は「アーティスト」ではなく「デザイナー」です。
アーティストは自分の感性や情熱を作品で表現します。作品を作り続けてそれを気に入った人がお金を出します。ゴッホのように生前は全く売れず後世になって破格の価値がつくこともあります。
対してデザイナーはお金を出す人(クライアント)がいて「その人のため」に作品を作ります。道具であれば「使いやすさ」を考慮し、ファッションであれば「着心地」を考慮し、ヘアスタイルであれば「似合う」や「扱いやすさ」を考慮しなければいけません。
アーティストであれば
「わかんないかな〜。これがいいんだよ、これが、だから素人は困るんだよな〜。」
でいいかも知れませんが、美容師がこんなこと言ったら、二度とそのお客さんは来てくれません。
また、アーティストは自分の「ひらめき」があった時とか、「気分が乗った時」に作ればいいのですが、デザイナーは決められた時間で作らなければいけません。
要するに、デザイナーは「お客さんに気に入ってもらってナンボ」の仕事です。
常にお客さんの方に向いていないといけないのと、お客さんのことを知らないといけません。
後、「古いデザイン」だと飽きられるし、そもそも好まれません。
また、「通好み」のマニアックなデザインは、極々一部の人には気に入られるでしょうが、一般受けはしません。その一部の人も短期的に気に入るだけで、すぐに飽きられてしまいます。
デザイナーは発想が貧困だと月並みな先行したデザインに酷似した(どっかで見た)ものしか作れません。
だからと言って奇をてらったデザインはデザインではなく限りなく「駄作に近いアート」になります。
デザインのオリジナリティーは常にクライアント(お客さん)と向き合い、コミニケーションを取ることと、
一番大切なのは、「ひとつでも多く提案する」ということで、「決めの一本」ではなく、「こんな雰囲気を表現したいなら、このデザイン」、「こういう場合はこのデザイン」と多くのアイデアをボツにしてでも、クライアントに「最高の一本」を決めてもらうことです。
そして、初めて、最高に気に入ったヘアデザインを作ることが出来るのです。
テレビや雑誌でよく名前を聞く有名店は往々にして、一部の優秀な美容師が引っ張っているだけで、残りはただ、その大きな看板にぶら下がってるだけの「並以下の美容師」だったりします。
なまじっか看板がデカいと、人は横柄になり、「作ってやってる」という姿勢になり、努力を怠る。
チャチャッとカットして、後は全てアシスタントに丸投げ。
シャンプーなんか絶対しない。その間、裏のスタッフルームでタバコ吸ってたりする。
もし、パーマやカラーを失敗しても「部下のせい」。
今回の「東京オリンピックエンブレム問題」はコネに頼ったオリジナリティーや発想力のないデザイナーの陥るお決まりのパターンなんじゃないでしょうか。
「〇〇賞を取りました。」、「〇〇コンテストで金賞を取りました。」
そんなもんはてめえのモチベーションを上げるためのもので、今や、昔の床屋さんや美容院のショーウィンドウに飾ってあるトロフィーみたいなもんです。
大切なのは目の前のお客さんが喜ぶか、喜ばないか、ただただシンプルにそれだけなんだ。
「パクってない!」
と意地を張り通す暇があったら、お客さん(国民)の方をちゃんと向いて、
「イイね!最高だね!」
と言われるまでデザインを作ることこそがデザイナーの使命なんじゃないでしょうか。
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