スパイになりたかった。

子供の頃になりたかった職業のひとつに「スパイ」がありました。

実際「何をやる人か」なんて、「わからんちんどもどっちめちん」のトンチンカンチン一休さん♪でした。

でも、子供心に「ヒミツ」って言葉に引かれて、「なんか、やっちゃいけないことを、コッソリやっちゃう感満載な仕事」なんだろうなあ〜なんて思いました。

「スパイメモ」ってのが売っていて、まあ手帳なんですが、「水に浸けると溶けるメモ」とか「ついせきシール」、「変装ヒゲシール」、「目が開いて見えるサングラス」とかいろいろ盛りだくさんでした。

敵に襲われた時（一度もないけど）大事なヒミツを書いたメモを水に溶かして証拠隠滅。
とは言え、大したヒミツなんてないので、とりあえず「好きな女の子」の名前を書いて、自分で洗面器に水を張ってメモを落とします。
結局かき混ぜないと溶けていかないので、大好きな女の子の名前を自分でグチャグチャして溶けて消える様を見ながらなんだか切なくなった記憶があります。

スパイのお仕事は何と言っても「情報収集」です。
それも「ヒミツ」にやらなくてはいけません。
物陰に隠れてメモに情報を書き込みます。もちろんバレないように「ヒゲシール」で変装してます。

「お母さんが今コロッケを作ってます」

これじゃあ面白くないので舞台を広げて外に出ます。
友だちの「弱点」とか書いたりします。

「下江くんの弱点は足の裏コチョコチョ。」

まあ、誰だってそうです。
メモいっぱいにヒミツが埋まったら・・・・・水を張った洗面器で溶かします・・・。

子供の頃の「なりたい」はイコール「夢」です。
もちろん、ほぼほぼ間違った知識しかありません。
インターネットもWikipediaもなかった時代ですし、近くに大人に「スパイってなにするんだっけか？」と尋ねて正確な答えが返ってきた方がどビックリ！です。

なので、勝手に想像して、勝手に解釈して、いくしかないのですが、「なりたい自分」があれば必ず「努力」します。

スパイになるために、コソコソ歩いたり、ヒミツをメモったり、下手な変装をすることは、大人から見れば「無駄」に映るでしょう。

でも、「想像して、工夫して、考えて、努力」する。
これは全ての事柄に通じる成長と成功のための大切な要素です。

「これしなさい」、「これあげる」と与えられるものでは絶対に得られません。
そして、なにより「とりあえずやってみる」という大切な「一歩」を踏み出すきっかけになり、どんな時も、どんなことでも諦めず新しく踏み出すことだできます。

最近の子どもに
「大人になってなりたいものある？」
と尋ねると

「ない」

と答える子どもが多いのに驚きます。
多分、習い事、塾、いろいろ「やらなきゃいけないこと」が多すぎて「やりたいこと」をやってる「暇」が無いのでしょうか？

「ネイマールみたいなサッカー選手になりたい！」

「アイドルになりた〜い！」

に大人が

「サッカーで食べてくのは宝くじに当たるより難しいんだよ。怪我したらどうすんの？サッカーやめたらどうやって生活するの？」

「アイドルなんて水着とかになるのよ、大きくなるとお母さんみたいな体型になるのに脱げるの？つか、私とお父さんの子どもよ。」

なんていきなり壁を作るとこれから出会う全ての「夢」を「一歩」も踏み出す前に諦める癖がつくんじゃないかと思います。

壁は自分でぶち当たって、自分で乗り越えて、自分で諦めて、そしてまた次の一歩を踏み出す。
人生はその繰り返しではないでしょうか。

そして歩き続けたその後に道ができる。それがプロフェッショナル。
唯一無二の自分だけのスキル。
自分に、自分の生き方に誇りを持てるのだと思います。

生憎、僕にはスパイになる才能はありませんでしたが、美容師を「続ける才能」はあったみたいです。

誰よりもワインディング（パーマを巻く技術）が苦手で、三つ編みすら知らなかった僕ですが、ちゃんとお金をいただけるくらいに成長しましたよ。

もし、「美容師になる」と言った時、母や周りの大人が「あんたにゃできないよ。」と止めていたらこうしてみなさんと出会うこともなかったかもしれません。

「がんばんなさい」

と言ってくれた母と、技術を教えてくれた先生や先輩、そしてなによりも僕を成長させてくれた多くのお客様に感謝です。

人に教えてもらったことや、頭に浮かんだことをメモするくせはスパイメモのおかげかも？
φ(｀д´)ﾒﾓﾒﾓ...

恵比寿　美容室　ヘアーハナ
中西トモミチ