暑い夏の日。
照りつける太陽。
校庭のはずれの樹からかき立てるようなセミの声。
電線のスズメか鳩のように一列に先生が並んでいる。
真ん中の台の上でマイクを持って話す校長先生。
多分、「ありがたい話し」をしてくれてたんだろう。
時節も絡めつつ、「夏休みは水の事故が・・・」とか「アサガオが・・」とか
僕は背が高かったので、後ろから3番目。
目の前にはクラスメイトの後頭部が墓標のように立ち並ぶ。
しばらくすると、少し前の後頭部が急に目の前から消える。
「バサッ!」
と音がして、並んでいる友達と友達の間に横たわる生徒の姿が見える。
体育の先生が走ってくる。
「おい、おい、大丈夫か?」
と声をかけたのかどうかも覚えていない。
BGMは相変わらずセミの声と、スピーカーから流れてくる校長先生の声。
時々、「キィーーーン!」とハウリングする。
覚えているのは、次々と、デパートの屋上にあった「モグラたたき」のゲームの様に頭が消えていく様。
運ばれる先は、保健室なんだろうか?
あそこはクーラーが効いていていいな。
オレも倒れたい。
この時ばかりは、丈夫な身体に生んでくれた親を恨んだ。
ああ、コーラ飲みてえ・・・
冷蔵庫で冷やした麦茶飲みてえ・・・
6年間、何度も何度も、聞いたんだろうが、
先生の話など、ひとっ言も覚えちゃいない。
あのくそ暑い炎天下で全校集会をやる意味がどこにあるんだろう?
ただ、セミの声とスピーカーのハウリングがうるさかっただけ。
近くの小学校に選挙の投票に行ったとき、そこだけ涼しそうに大きな木の木陰の中にあった、「先生が立つ台」。
そう言えば、あの台の名前ってなんて言うんだろう・・・?
おしまい