「お兄ちゃん、あんたのシャンプーはほんまに気持ちがええね〜うち(私)がいままでしてもろうたシャンプーの中で一番気持ちがええよ〜。今度からお兄ちゃんにシャンプーたのんでもええかね?」
僕が美容師になって初めて「指名」をもらった時でした。
それと同時に「初めて他人に必要とされた」時でした。
故郷広島で美容師を始めたときはまだ右も左も解らないガキでした。
当然、最初は「なにも出来ない」ので、
床を掃いたり、掃除、片付けをしたり、タオルを洗いパーマのペーパーをひたすら伸ばす、いわゆる「雑用」ばかりしてました。
そして最初に教えてもらった「技術」がシャンプーでした。
ご案内してタオルとシャンプークロスをかけて
「おつかれさまでした!」
と起こしてご案内するまで、誰も助けてくれません。
自分だけの「世界」がそこにはありました。
カットも、ブローもパーマもカラーも他の仕事はなにもできませんでしたが、こと、シャンプーだけは「誰にも負けない!」自信がありました。
当時、めちゃめちゃ忙しいお店で働いていたので一日30人以上洗う日もありました。
来る日も来る日もシャンプーばかり。
たまにフロアに出てもすぐに
「シャンプーお願いしまぁ〜〜す!」
の声に呼ばれてまたシャンプー。
「どうせやるなら」と洗う箇所に合わせて力加減とリズムを変えてみたり、後頭部の流し方を工夫してみたり、いろいろやりましたよ。
そしてある日、その店のオーナーの古くからのお客様のおばあちゃんに冒頭の言葉を頂いたとき、
「ああ、美容師になってよかったなぁ〜〜〜・・・」
としみじみ思いました。
ついこの間まで学生で、親に学費を払ってもらって食費から何までお世話になって、アルバイトしても自分の小遣い。仮に辞めてもいくらでも代わりがいる。
そんな自分を必要としてもらえた嬉しさは30年近く過ぎた今でも忘れていません。
美容室における「シャンプー」の位置づけは「カットやパーマの前の汚れ落とし」。
美容師に至っては「下っ端の仕事」としているお店や美容師が圧倒的だと思います。
実際、僕が働いていたお店でもアシスタントに
「シャンプーお願いしまぁ〜〜す!」
と頼んで自分は裏に入ってタバコを吸ってる人も多くいました。
アシスタントに
「店長、シャンプーマシーン(自動シャンプー機)入れましょうよ〜、僕らシャンプーするために美容師になったわけじゃないし、シャンプーとデザインは関係ないじゃないですか〜」
と真顔で言われたこともあります。
もちろん、一生シャンプー「だけ」じゃああまりにも悲しいけど、一生シャンプー「も」した方が僕はいいと思います。
だって美容室で「気持ちいい技術」はシャンプー「だけ」ですから。
どれだかカリスマ美容師が逆立ちしながらすごいテクニックでカットしても、目が飛び出るほどの高級な薬でカラーをしても「気持ち良さ」は得られません。
むしろ、長時間座っていて、いろんな薬をつけたりされると「苦痛」です。
せっかく「見かけ」はキレイになっても表情が疲れていたり、辛そうだとそれはキレイとは言えません。
本当のキレイさや美しさ、可愛らしさは表情からくるんじゃないでしょうか?
そう、シャンプーは美容室の中の技術で唯一「表情をデザインする技術」だと僕はそう考えています。
スーさんとミヨちゃんも「シャンプーするのが大好き」です。
いくらどんな高級なシャンプーを使い100万円するシャンプー台で洗ったとしても「気持ち」が伴わないと文字通り「気持ちいい」シャンプーはできません。
下衆な表現ですが、「気持ちのないキス」みたいなもんです。
スーさんもミヨちゃんも未だ新規のお客さんから
「今まで行ってた美容室のシャンプーと比べものにならないくらい気持ちいいです♡」
と言ってもらえるのも気持ちが入ってるからだと思います。
だから、Hanaのシャンプーは自信を持って「気持ちいいですよ」と言えるんです。
もちろん、トモも負けてません。
ご指名いただければ今でもしますよ。
だってシャンプー大好きですから。