以前、僕が美容室に勤めていたとき、その店は都内に13店舗ある比較的大きな会社。
そこで僕はアーティスティックチームを作り、技術マニュアルを作成したり、地方の美容師さんにカットやメイクを教えに行ったりしていました。
そのアーティスティックチームの仲間が2人いて、TとN。まるで僕のイニシャルみたいです。
この3人でいろんな企画をしたり、毎年新しいデザインを作ったりしてました。
Tは原宿美容師タイプ。流行りを追うタイプで当時流行ったNIKEのコレクションもしてました。AirMAX`95を自慢げに見せびらかしてたのがなんとも滑稽でした。
Nは職人気質で「TVチャンピオン」の美容師対決とか出てました。
時は流れ、僕は独立しました。
いちばん独立に憧れていたのはTだったのですが、結婚し、子供が出来ました。
そうなると生活にお金がかかり、奥さんも働けないので独立は遠のく一方でした。
なので、その美容室で頑張るしか無くて頑張って「総店長」の地位を手に入れました。
NはTと比べ実力は数段上なのですが世渡りが下手なので「いいデザインを作り、お客さんに喜んでもらいたい」一心でよく社長に意見してました。
なので、なかなか店長にすらなれませんでした。
でも、僕はそんなNが大好きでした。気性的にも馬が合い、彼も僕の店に何度か顔を出してくれました。
いつだか、Nの結婚式でTに合ったとき、
「おう、久々だな。おめえ、一度くらい顔出せよ。」
と言ったら
「いやぁ〜総店長になって忙しいんスよぉ〜」
と言うので
「そんなこと言ってるからいつまで経っても独立できねんだよ、おめえはよ。」
と笑っていったら固まってました。
あれからさらに数年が過ぎ、Nから電話が入りました。
「トモさん、今度僕、総店長になりました!」
「おお、よかったな。やっとだな。つか、Tはどした?」
「あ、Tですか?クビになりましたよ。」
Nの話ではTは元々指名が少なく自分の生き残る道は管理職だ!と決めてサロンには週3回出て後は本社で企画に専念していたそうです。
当然、会社の経費もある程度使えるみたいで、人間、自由に使えるお金を勘違いすると社保庁問題よろしく、使い込みとかしてしまうみたいです。
「結局、1年ちょっとで1千万使い込みしたみたいなんスよ。」
使い道は最初の家は自分の洋服やアクセサリー。そしてその大半が風俗に消えたそうです。
「1千万円、どんな風俗でつかったんだ?どんなプレイしたんだ???」
とそっちの方が気になりました。
結局Tは警察沙汰にならなかったものの、職場は解雇。おまけに自分のいた店の女の子にも手を出していて奥さんとは離婚だそうです。
人が「墜ちる」というものはいとも簡単なモノなんでしょうね。
思えば10数年前、同じ時間、同じ場所でひとつの事にああだこうだと言い合って時にはケンカしたり、時には大笑いした「仲間」が時の流れの中で変わっていく。
道を見失わないように歩いていきたいと思いました。
もし、曲がっていたら教えてくださいね。