騙すつもりはないのだが、隠しておこうと思うことですら僕は見抜かれてしまうようです。
隠す僕が下手なのか、見抜いた人が鋭いのか、
多分、僕が下手なんだろう。
昔からウソをつくのがが下手だった。
母親に
「あんたはウソをつくと鼻の穴が開くけえ、すぐわかるんよ。」
と言われ
「そ・・・そんなことないわい!」
と鼻の穴を開きながら答えた。
嬉しいことがあると笑いを堪えられない。
悲しいことがあるとどんよりオーラが出る。
腹立たしいことがあると頭から湯気が出る。
ある意味わかりやすくて扱いやすい。
ある意味騙しやすい。
ある意味単細胞。
母が末期ガンで入院してたときも母親に悟らせないために一世一代のウソをついた。
そのころ自分では大人になったのでウソも上手になってると思いこんでいた。
他の誰にも言わなかった。
もし、その人が母の前でウソをつけず涙の一粒でもこぼしたら母にばれると思ったから。
もし、その人の鼻の穴が開いたら母にばれると思ったから。
母に会うたびにウソをついた。
本当は抱きしめて泣きたかった。
「ありがとう」と言いたかった。
でも、僕の口から出た言葉は
「手術も成功して後は体力付けるだけじゃけえ、早よ働きんさいや。」
などと突き放したことを言ってしまう。
最後の最後までそうだった。
様態が悪化して多分ほとんど意識も無く、僕の言った言葉なんか届いて無いのかも知れないときも
「早よ、退院して美味しい物食べに行こうや。」
「寝とったらディズニーランド連れていけんじゃろ。」
多分、僕の鼻の穴はこれ以上なく開いていたんだろう。
僕はウソをつくのが下手です。
もし僕が鼻の穴を開いてあなたに見え見えのウソをついても心の中で笑ってだまされてやってください。
おしまい