小学生の男の子二人が店先にやってきて
「ねえ、ゲームやらして〜」
とPS3を繋げている店のテレビを指指してそう言った。
「ごめんね〜。今日は忙しくて、このテレビはお客さんが観るテレビだからダメなんだよ〜。」
と説明すると
「僕のお母さん、この店でお世話になってるよ!」
と切り返してきた。
おお、そうか、そうなのか。
「おい、おまえら、よく言った。逃げんなよ、オレは100m5秒で走れるからな。あのな、おまえがお母さんと買い物とか行って、お店の人が頭下げてんの、あれはおまえにじゃなくて、お母さんに下げてんだ。おまえに頭下げてる大人はこの世に一人もいねえんだよ。おまえは生きてんじゃねえんだ、生かされてんだ。解るか?ひとつだけ、いいこと教えといてやる。よく聞いとけよ。おまえが大事にしてる、そのカバンやオモチャ、始めて会うオレが「くれ」っつたらくれるか?くれねえよな。でも、なんか欲しいモノをオレがおまえにくれたりしたら「貸してもいいかな?」くらい思うだろ?そう、人になんかして欲しいときは、「なんかしてあげたくなる」気持ちにさせんだよ。な?わかるか?そしたらオレが「お母さんがお世話になってるよ」と言われておまえらにゲームやらしてやりたくなると思うか?」
二人とも首を横に振った。
「な?それどころかいや〜な気持ちになるの、わかるだろ?そしたらこういう時なんていうんだ?」
「ご・・ごめんなさい・・。」
「そうだよな。でもな、これで、オレらは知り合いになったんだ。お母さん抜きでな。だから友達になったんだよ。だったら、今度、暇そうな日に来いよ。ちょっとだけやらしてやっから。」
以前、「
わがままを言った方がいい」ということを書きました。
したいこと、して欲しいことを頭の中に押し込めて置くより思い切って言った方がいいって話しです。
でも、わがままにもルールがあります。
「相手を困らせない」すなわち「強要しない」ことです。
よく、いろんなお店でわがままな人を観ます。
隣のケーキ屋さんが、まだ行列が出来ていた頃、とあるいかつい顔で声の高い男性と大柄でヘビー級ボクサーのような女性の芸能人がやってきて並んでる人の間を割り込んで先頭に行ってシェフを呼び出します。
テレビで共演したか何かだったのでしょうか、しばらく話したと思ったらケーキを貰って外のテラス席で食べ始めました。まるで自分たちが「特別」かのように。
お金や対価を払えばみんなお客さんです。
でも、お金で買えるのはメニューや商品であって「気持ち」は買えません。それはメニューにないからです。(スマイルをメニューにしてる店もありますが)
「お店に優しく(特別扱い)されるお客様」は往々にしてその店の人が「優しくしてあげたい」という気持ちになります。
お金じゃなくて、長い長い時間を掛けた人間か関係や思いやりや笑顔、お財布に入ってない、ましてやカードでも払えない「気持ち」のやりとりがあるからこそできることです。
最近「お金持ちになりたい」とか「儲かる仕事がしたい」という人がやたら増えてきましたが、それもいいかも知れませんが、その前に「わがままを気持ち良く聞いてもらえる人」になった方が意外と近道だったりするのかも知れませんね。
おしまい