「トモさん、お客さんのこと、好きになったりしないんですか?」
ありますよ。
もちろんです。
美容室ですから、たくさんの女性が来てくれます。
見た目がどんぴしゃでタイプの人、
自分のフェチ感にドストライクの人、
お話ししていて、とても魅力的な人、
生き方、考え方に惹かれる人、
もう"大好き"のオンパレードですよ。
ただ、片っ端から襲いかかると、当然、今頃Hanaどころか美容師としての僕も居なくなってると思います。
僕がまだ、美容師として駆け出しの頃、先生に
「美容師というのは、お客さんに対して、息子(娘)であり、兄(姉)であり、弟(妹)であり、恋人でなくてはいけない。」
と教わりました。
要するに"大切な人"として接しなさいということでした。
確かに、お客さんとは"長い付き合い"です。
他の人は解りませんが、僕はもう20年以上も髪の毛を担当させて貰ってる人もいます。
Hanaももう10年目になりますから、オープン当時からのお客様も、もう二桁ってことです。
当然、嫁よりも長い付き合いになります。
僕の歴代のGFや、いいことも、悪いことも、幸せも、悲しみも、みんな知ってます。
僕も同じように、旦那さんや、BFよりも長い付き合いだったりもします。
もちろん、人との関係は一緒にいる時間の多さではなくて、思いの強さや関係性ですから、、僕がすごいってわけではありません。
でも、これだけ長いと、表面的な優しさや、思いやり、そして、お世辞だけでは、すぐに足下が見えてしまいます。
そして、一番違うのは、友達や、家族と違って"お金を頂いてる"ってことです。
だから、仕事はいつも真剣勝負です。
"長いつき合いだから"という"甘え"はききません。
過去、どんなにいいデザインを作ったとしても、次に、いいデザインが提供できないとダメです。
また、いくら良かったからと言って、毎回同じでは飽きられてしまいます。
特に女性は"キレイであり続けなければいけない」と思います。
また、日本には四季があって、気分もその都度変わっていきます。
なので、毎回、「ちょっとした変化」や時には"フルモデルチェンジ"が必要になります。
それも、お客さんから言われてじゃなく、こちらから"提案"しなくてはいけません。
「飲みたくなったらお酒ぇ〜♪眠たくなったらベ〜ッドぉ〜♪」
とまるで"ピンクレディ"のUFOみたいです。
常に、「相手が何を欲してるのかを読んで、言われる前に提供する。」
こんなことを何十年も続けてるわけですから、当然"気の利いた人"には自然となりますね。(笑)
また、"お金を求めて"だと、長続きはしてませんね。
そんなわけですから、大好きな人がいても、そうそう簡単に「好きです」ってわけにはいかないわけですよ。
どんなデザインやカラーも、事前には分かりません。
お客さんがお店に来てくれてからカウンセリングをして、始めて決まります。
カットで1時間、パーマ、カラーで2時間という滞在時間、技術はもちろんのこと、アロマやお茶、シャンプーの力加減、お話し、マッサージ、etcと全てにフル回転です。
でも、それが、ある意味で僕の"愛情表現"だったりします。
僕にはもう孝行する父も母もいません。兄弟もいません。
結婚したので恋人もいません。
だから、尊敬する父親だったり、感謝に絶えない母親だったり、憧れの兄や姉であったり、可愛い妹や弟だったり、大切な友達だったり、大好きな恋人だと思って僕は接しています。
僕にとってHanaは人生そのものなんです。
だから、みなさんのおかげで"淋しい"と思ったことは一度もありません。
「ありがとうございました。またね・・・」
と見送る後ろ姿に、心の中で
「お慕いしてます・・・♡」
それが僕の幸せです。