お客様からお祝いにと書の掛け軸を頂きました。
ずっと書道をやってらっしゃる方で、
これはそのかたの先生、御年85歳の方の書だそうです。
書いてあるのは論語の一節で
「子曰、巧言令色足恭、左丘明恥之、丘亦恥之、匿怨而友其人、左丘明恥之、丘亦恥之」
と書いてあります。
当然、僕にはなんのことだかチンプンカンプン一休さんです。
「恥」という言葉が多く出ているので、一瞬、「ムフフ」な話かと脳をよぎったのですが、論語でそれはないか。
だから「これは恥ずかしいことですよ。」と戒めの言葉なのかな?とかいろいろ考えました。
お客様がご丁寧に、解りやすく訳を書いて入れておいて下さいました。
そこにはこんなことが書いてありました。
子曰わく、巧言(こうげん)、令色(れいしょく)、足恭(すうきょう)なるは、左丘明(さきゅうめい)これを恥ず、丘(きゅう)も亦(また)これを恥ず。怨みを匿(かく)して其の人を友とするは、左丘明これを恥ず、丘も亦これを恥ず。
さらに噛み砕くと、
孔子がおっしゃいました、
「左丘明(さきゅうめい)は言葉巧みで愛想笑いが上手くてへつらいの上手い事を恥とした。私もそう思う。そして嫌いな人間とうわべだけの交際をする事を恥とした。私もそう思う。」
左丘明(さきゅうめい:孔子の家臣)
孔子は社交辞令が嫌いで、社交辞令が「礼儀」と思われがちですが、それは違う。相手に真心と敬意を持って接する事が孔子の言う礼であって、自分の利益のためのおべっかは礼では無いということ。
僕たちサービス業に従事する者に求められるものの中で「笑顔」があります。
以前、トモが勤めていた美容室は都内に何店舗もあるチェーン店。
スタッフが多いと様々な教育があって、「接客講習」とかもあったりします。
今でも忘れられないのは、会社が専門の先生を呼んで、「明るい挨拶の仕方」とか各店で講習してもらったとき、
講師の人が
「接客業に大切な事は『笑顔』です!どんな時にでも笑顔が出せるようにしましょう!」
と言われ、スタッフひとりひとりに「いらっしゃいませっ!」とお辞儀をさせてチェックします。
すると
「みなさん、笑顔が足りませんね〜、もっと笑顔を出しましょう!」
と指導が入り、講師が連れてきた女性スタッフがお手本を見せてくれます。
明るい笑顔で「いらっしゃいませぇ〜♡」一礼して、その後も笑顔。完璧です。
対象物もないのに良くできるなと感心しました。
講師の人がこう言いました。
「みなさん、笑顔を出すとき、好きな人を思い浮かべてみましょう。ほら、自然と笑顔になるでしょう?」
当時付き合っていた彼女のことを思い出したが。たまたまその時、ケンカしてたので、逆に『苦い顔』になってしまった。
ダメじゃんオレ。
誰かが
「彼氏がいない人はどうしたらいいんですか?」
と聞いた。
すると講師の人が
「いい質問です。みなさん、お金は好きですよね。お客さんはお金を持ってきてくれます。お客さんが来たらお金を想像して下さい。ね、笑顔になるでしょ?」
その後、講師の人はロールプレイングするとき、キューのタイミングを出す際に
「はい!お金が来ました!」
と言った後に「いらっしゃいませぇ〜!」を言わせました。
観てるうちにだんだん腹が立ってきたので。
「やめましょう。なんか間違ってますよ。もし、自分がお客さんだったらそんなこと思いながら笑われたら嫌ですよ。さっきから観ていて、先生が連れてきた女の子の笑顔がなんか気持ち悪いのはそういうことだったんですね。目が笑ってないもん。」
お客さんはそれほどバカじゃないですよ。気持ちが入ってない笑顔なんて一発で見抜かれちゃいますよ。
Hanaはいいですよ。みんな普通に笑ってますから。
でも、これはお客さんのおかげなのかもしれませんね。
僕たちのたわいもない話に笑ってくれたり、いろいろ優しくしてくれたり、
少々プライベートで嫌なことがあっても、笑顔になれるのは、みなさんのおかげなんでしょうね。
だから「お金が入ってきました!」なんて思わなくても笑顔でいられますよ。
「どんなにかっこいい洋服を着て、マニュアル通りの角度のお辞儀をしても心が伴わないとダメなんだよ。」
と教えられた気がします。
2階の床の間に飾って新年を迎えようと思います。
おしまい